gallu’s blog

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

「偽装請負」を別の角度から

元ネタはこちら


「多重請負いは必要悪か」と問う前に考えたいこと
http://d.hatena.ne.jp/NOV1975/20140205/p1


多重下請けは本当に必要悪なのか──ポジティブな改善策を考えてみる
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20140130/533589/


ん…先に元記事に軽く突っ込みを入れつつ、「別の切り口」を展開予定。


http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20140130/533589/

今回、取材した大規模プロジェクト経験者は、「下請けネットワークを辿り、9次請けまで辿って、ようやく求める業務知識やスキルを備えた人材に巡り会うこともある。このネットワークなしには、適切な人材にアクセスするのは難しい」と語る。

novtan別館さんでも突っ込まれてるけど、ここは色々と「はぁ?」って感じ。


http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20140130/533589/?P=2

この仕組みがあればこそ、大手SIerはユーザー企業のわがままを「はい、何でもやりまっせ!」と、請け合うことができる。受注後、下請けネットワークを通じて必要な人材を調達し、スクラッチ開発やカスタマイズで工数を稼ぐ、日本独特のSIモデルがここから育まれた。

2箇所突っ込み。
「大手SIerはユーザー企業のわがままを「はい、何でもやりまっせ!」と、請け合うことができる」はお金の話が絡むのもあって、後述。
もう一つは「スクラッチ開発やカスタマイズで工数を稼ぐ」この部分。これも商売の仕方としては大概「如何なものか」と思う。
「一端安値で請け負っておいて、他に乗り換えが効かなくなってから値段を持ち上げる」あたり、独占禁止法とかそーゆーものが発生した経緯を想起させる感じですね。


http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20140130/533589/?P=4

これまで国内のフリーランスPMといえば、大手SIerの担当者との個人的人脈を通じ、仕事を受けるのが一般的だった。上記のようなマッチングサービスが普及すれば、SIerだけでなくユーザー企業も優秀なPMにアクセスしやすくなる。

特に大きく否定はしないのだけれども。
対象PMが「優秀か否か、が判断できる程度に優秀な判断スキルが企業さんに必要になっている」というあたりに言及がないのは微妙に片手オチのような。


…ついでに軽く。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20140131/533806/

ITベンダーは「体力勝負」から「頭の勝負」への転換を急げ


「もはや、体力勝負のSIモデルは限界だ」――。JISA副会長、横塚裕志氏の主張は明快だ。日本のIT業界に足りないところは何か、どのような方向に舵を切るべきか、横塚氏に聞いた。

「もはや」じゃなくて初手から無理がありすぎる。なんだよ「体力勝負」って。


http://d.hatena.ne.jp/NOV1975/20140205/p1

そもそもフリーランスでやっていけるだけの実務を身につける場ってどこだっけって話も。

これ、結構重要だし、もっと取り上げられるべき問題かなぁ、と。

解雇規制をゆるめて出たり入ったりを容易にするってのもよく言われますけど、それって結局技術は蓄積されないし賃金は多分上げざるを得ないし会社からするとあんまり嬉しくなかったりもするんですよね。

これも結構あちこちで問題。
「技術が蓄積されない」のって、かなり「MOTTAINAI」と思う。

大規模システム開発はどんなに効率化しても人海戦術の部分はどうしても出てきてしまいますし、そのためにSI屋がいるといってもいい部分はあります。

これは違う確度で痛い(苦笑
本質的にはNoである「べき」で、でもまぁ現在、ある程度Yesで。ただ、つまり「どんなに効率化しても人海戦術の部分」は、出てくるけど、減ってきている部分でもあるので(減らないと高コスト体質になるので、ビジネス的に淘汰されやすい、ので、結果的に減る方向へのバイアスがかかりやすい)。
んで、「そのためにSI屋がいるといってもいい部分」がある場合、つまりSIerさんの領域は「どんどん減ってくる」、っと。
まぁあんまり正直SIerさんによい印象ないので*1、いいっちゃぁいいのですが B-p


んで…本題…の前に、免責事項。
法律とかの見解は「おいちゃんの認識している範囲」なのと、おいちゃんはそーゆー系譜はとても疎く、基本的には「ネットで調べた」+α*2程度のものなので。
その辺正確に知りたい場合、法務の専門家にちゃんと聞き倒してください。


さて。
まず、派遣先でさらに派遣される、所謂「多重派遣」は、法的に禁止されています。
理由はそこまで深く把握していないのですが。おおまか「ごっつい中抜きと責任所在の不安定さ」が評価されたモノであるようです。
中抜き金額のごつさ…というか「ゴツい中抜きをされた結果、実際に労働する人間の手元に残るお金の"恋しさと せつなさと 心細さと♪」のあたりは、「■[親方]奴隷船の船員たち( http://d.hatena.ne.jp/gallu/20091128/p1 )」の表をご覧いただくとよろしいかもしれませぬ。
まぁ「2次請け」あたりまでが、常識的に見て、許容範囲ギリギリ、でしょうか? 多分。


とはいえ、違法であるという程度の希薄な根拠で*3躊躇しては、商いは始まりませんので*4
ここで、契約形態を「請負」に変えてみます。


請負が便利なのは「更に別の人に請け負わせる事が(契約的に縛られてなきゃ)出来る」ので。
かくして、二重とか三重とか八重とか十重とかいう派遣形態が、「請負っていう契約形態なら」可能になります。所謂「偽装請負」というやつですね。
これで問題なく、大量の技術者をかき集めて投入して利益を稼ぐ事ができます。


…って状態でぶち込まれると、大変に面倒なことになります。
主として「現場にぶち込まれた」技術者が。


端的には、上述において、そこそこの確率で「大変に、営業サイドに都合の良いハイブリッド」な状況を押しつけてくるわけですね。
この文章は「そ〜ゆーのを駆逐しましょう」ってのが主眼です。ぶっちゃけ。


ん…先に整理しておきましょう。
ここで出てくる「法的な」契約形態には、以下の3つがあります。
・請負
・準委任
・派遣


ちなみに余談。「業務委託契約」というのを時々みますが、そーゆー契約区分は「ありません」。
日本の法律において、契約は「贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用(雇傭)、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類の契約」、だそうです*5


ちなみに請負はそのまんま。
準委任は「委任」の仲間で、これは「法律行為をお願いするのが委任で、似てるけど法律行為"以外"をお願いするのが、委任に準じるから準委任」って程度のカテゴライズ。
派遣は「雇用」の1形態となります。


なので重ねて書きますが「業務委託契約」ってのは「ありません」。
その契約が「実際の法律上の種別としてはどれにあたるのか」を、ちゃんと確認しておきましょう。以下のハイブリットの話もそこに繋がります。


んで。
まずわかりやすいのは「請負」。
これは「仕事の完成」を条件に「お金を払う」という、まぁお仕事としては一番イメージがしやすいものです。
が、先に書きますと、ことIT業界においては「一番ありえない契約」でもあります。ここ、裁判で出るので注意*6


もう一度書きます「仕事の完成を条件にお金を払う」。
さて質問「仕事の完成」の定義は?


「■[親方]興味深いので:「完成」とは?「約束」とは?*7 」でも少し書きましたが。
ん…正直、ITのプロジェクトって「大分と、先の見えないモワっとしたものを作る」ケースが、極めて多いです。
なので、そもそも「完成の定義」を仕事前に「明確にする」のは、とても難しいんですね。


えぇまぁ双方が「本当に合意すれば」、「顧客が満足するまで」とかいう無限に近い宇宙に飛び込んでみてもいいのですが、主として収入収益の観点から、限りなくお勧めいたしません。
そんなのがあるから「下請代金支払遅延等防止法」とかってのが出てくるのですが。
チェックしておきたいのは「書面の交付義務(3条)」「下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)」「遅延利息の支払い義務(4条の2)」、また、禁止事項としての「受領拒否(4条1項1号)」「下請代金の支払い遅延(4条1項2号)」「下請代金の減額(4条1項3号)」「不当返品(4条1項4号)」「買いたたき(4条1項5号)」「不当な給付内容の変更・やり直し(4条2項4号)」あたり。
…なんか大量ですが、とてもつらい思いをしているときに「あれ? これって違法状態ぢゃね?」って気づける程度の知識は身につけておくことを強くお勧めいたします。


…とりあえず話を戻しまして。
もう一度書きますが、請負契約の場合「「仕事の完成」を条件に「お金を払う」」です。
他の縛りはあんまりありません。
あぁ「仕事の完成」が基本なので、完成品があんまりヒドイ場合は一定期間「瑕疵担保責任」が発生します。法律によって、半年だったり一年だったりするのですが。
んと…正確には。民法第570条経由民法第566条的、には1年。一方で商法第526条的には六箇月、ってなってるですね。
どっちがより有効なのかは不明なので、そこまで掘り込む場合、適宜、専門家に相談することをお勧めいたします。


次に、準委任と派遣ですが。この2つは似ていて、どちらも「時間給」です。
請負と比較すると
・完成責任はない
というのが最大のポイントではないでしょうか。
ちなみにこの「完成責任がない」ために、お仕事としては色々ともにょられる事も多いのですが。
んと…わかりやすく書くと、弁護士業務と医師業務はどちらも「準委任(弁護士の場合は委任)業務」です。
「準委任のように完成責任がないのは無責任だ」という場合、医師業務と弁護士業務も「無責任」になるのですが、それ、面と向かって言える話ですかねぇ? 的な。


ちなみに、(準)委任契約の受任者には、善良な管理者の注意義務(善管注意義務民法第400条)ってものがこびりついてくることが、民法第644条に明記されています。
雑に片付けると「全力で頑張って、かつ"常識的に考えて"その仕事受注するレベルでの一般的なスキルとかちゃんと持っとけよ」って感じですね。
「ナニを持って一般的とするか」は色々と非常に懐疑的ではありますが、とはいえ「あんまり馬鹿なことをしていると」引っかかりますのでご用心ご用心。


お次に「準委任と派遣の違い」です。
んと…準委任は「業務(行為)に関する契約」であるのに対して、派遣は「雇用に関する契約」になるのが、一番の差異なのですが。
具体的には
・発注者が指揮命令権を持てる
ってのがでかいです。
結局、派遣ってのは「雇用形態」の1種なので(ちなみに準委任(と請負)は「お仕事(の一部)をお願いする」の1種です)。
雇用「主」さまがいるわけで、彼らが、適切に指示を出す必要があるわけですね。
具体的には「発注者さんのご指示に従って我々は手を動かします」ってのが派遣で、他方、準委任は「我々は自主的に手ぇ動かしますんで、やりたい事だけ教えてください指示はすんじゃねぇ」となります。


さて…えらい長い内容になりましたが、今しばらくおつきあいのほどを。
上述を「とても都合良く」解釈すると、大体、こんな感じになります困ったことに実例のパッチワークです。


お仕事が完成していない上に仕事のやり方進め方も自主的ではなく指示待ちばかりで業務が滞りがちで、かつ遅刻が多いので大幅に減給をします。


…一見「まともな」文章ですね。
では、ちょっとだけ、付記してみましょう。


請負契約(の仕事の完成)的にお仕事が完成していない上に、
準委任(の善管注意義務)的に仕事のやり方進め方も自主的ではなく指示待ちばかりで業務が滞りがちで、
かつ派遣(の発注者が指揮命令権を持てる)的に(作業場所、作業時間の指示をしているにもかかわらず)遅刻が多いので大幅に減給をします


素晴らしいハイブリッドですね。


もし契約が「請負:仕事の完成」なら。
まぁ前提条件として「仕事の完成、の定義が明確である」必要があるのですが、それが明確であるとして、「仕事の進め方」と「勤怠」に口を出される意味とかわからないですっていうか自宅で作業をしてナニが悪い? って感じ。


もし契約が「準委任:労務の提供」なら。
そもそも「仕事の完成」は無関係だし、指揮命令権は発注者にはないので、その辺突っ込まれる義理とか縛りとかないです*8


もし契約が「派遣:労働力の提供」なら。
「仕事の完成」はもとより、指揮命令権が発注側にあるんだから、仕切りはちゃんと発注側がやってくださいませんと。


というまぁ突っ込みどころ満載なのですが…まぁ営業さんと発注側にとってこの「ハイブリッド契約」って便利ですよね。
…っていうハイブリッドが、実際、特に「多重派遣」「偽装請負」のところだと、ぶっちゃけ、散見されるんですね。


いやまぁ「使い潰されてぼろぞうきんになってみたい」向きに置かれましては特に止めないのですが。
一般的かつ常識的で文化的な生活を送りたい人は、あんまり「相手にばっかり都合の良い場所」にいると、結構苦労するんじゃないかなぁ、と。


んで。
上述を「解らずに」、或いはもうちょっとヒドいと「解っててなお」ハイブリッド持ってくる馬鹿がいるので。
そういうときに、警戒するなり吊すなり締め上げるなり殴りつけるなりチクるなり晒すなりするためにも。
最低限「自分の身を守る」知識って、必要なんじゃないかなぁ、っと。


んで、その辺のネタが「多重下請け」という単語と親和性の高い現場からは、実地で学べる事が多いので。


えらいこと長くなりましたが、memo代わりに書いてみました。

*1: http://d.hatena.ne.jp/gallu/20080923/p1

*2:一部実体験

*3:まて

*4:そんな根性の商いなど始まる前に終わってしまえ、とかいう本音は置いておきます

*5: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%91%E7%B4%84#.E5.A5.91.E7.B4.84.E3.81.AE.E5.AE.9A.E7.BE.A9

*6:いやほんとマジで…ヒドい目にあいました…

*7: http://d.hatena.ne.jp/gallu/20131021/p1

*8:勿論「遅刻をした結果、必要な労務が提供できない」のは、善管注意義務に違反しているのでNG