gallu’s blog

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

「「残業代ゼロ」法案」に突っ込んでみたい

割と本気でしゃれになっていないような気がするので、おいちゃんなりに突っ込んでみたい。


前提として
http://www.asahi.com/articles/ASG4P5142G4PULFA00Y.html

政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討する。仕事の成果などで賃金が決まる一方、法律で定める労働時間より働いても「残業代ゼロ」になったり、長時間労働の温床になったりするおそれがある。

がほぼ情報の全てである前提で話を進めます。
基本的には「仕事の成果などで賃金が決まる」ようにするために「労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げる」、ってのが骨子であると認識をしています。
なので、もし、この記事に書いてあることに対する「現実的に有効であろうと想起される対策」が十分に盛り込まれている場合、この限りではありません*1


んと…まずは、対象の法案を「とっても善意な妄想」で想像してみたいと思います…いや、実際色々、現状の残業代という制度において「憂慮すべきところ」はあると思うので。


いわゆる「残業代が出る」状況で、技術者*2がとる「一番マズイ選択」ってのは割と明確で。
「本来なら2時間で出来るものを10時間かけてダラダラと作成してお時給とお残業代を稼ぐ」って思考です。
ちなみにこの場合、10時間かけたほうが、2時間で作るよりも大抵の場合「より質の悪い、ダメコード」を書くケースが多いようです(ある程度理由の想像は付くんだけど、その考察は一端オミット)。


実際、弟子には話をするんだけど「時間換算すんな」ってのはあって。
技術者がお金をいただくのは「椅子を暖めた時間」ではなくて「成果物に対して」のはずなので。
その辺は、気をつけないと本当に「腐る」原因になります。



経営陣的には。「金をかけてより品質の悪いモノ」なんで、なんていうか、殺意くらい湧いてもイイレベルで困ると思うのです。


ってあたりが念頭にあって、その辺から多分「労働時間の長さと成果が必ずしも比例しない」とかってなって「労働時間に対して賃金を支払うのではなく、成果に対して払う仕組みが必要」とかって考えて「時間外の賃金割増など法律の条文の適用除外」ってなところになったんだろう。
………と、限りなく好意的に、一端、とらえてみます。


んとね結論からいうと「ろくな事にならない可能性ばかりが山盛りで想起されますんでヤメロ! 駄目! ゼッタイ!」。


上述なんですが基本的には以下の条件が満たされていることが前提としてあります。
・割り振られたタスクの量と難易度と納期が、当人の給料に対して適正であること
・タスクの評価基準、或いは言い方を変えると「完成条件」が明確かつ定量的であること


割り当てられたタスクが適正であればこそ「定時内に終わるはずだよねぇ」って発言から「残業は自己責任」って言える訳ですし。
同様に、完了条件が明確であればこそ「明確な完了条件、が、時間内に満たせないのであれば、それは自己責任」って言える訳です。
端的には「受託」と同じ要件ですね。
それが、ちゃんと満たされている必要があるのですが。


出来るの?
ってのが、単純かつ強烈な疑問。


請負のお仕事をやっているときですら、この辺は結構大変なのですが。金額の擦り合わせにしても、スコープの決定にしても、完了条件の締結にしても、「完了条件を締結してから作成したのに納品直前とかのタイミングで降って湧いてくる変更」に対するすったもんだにしても。
これを、全社員一人一人に対して「社員ごとに、支払っている給与に対して適正なタスクにする」とか、現状「あぁ出来るよ」って言える上司さん、どれくらい居るんでしょう? & その上司のいう「適正」が本当に「適正である」保証って、どこでどんな風に担保するんですかね?
通常の契約だと「双方の合意」が原則なのですが、だとすると「上司と社員」との間で個々に合意を取る必要があって。…ってな作業を、一定期間ごとにやるんですかね? やると、上司さんのコストを物凄く食うよ?


請負案件とかやってると、この法案が通った後に何が起きるかとか、正直、たっぷりと予想が付くのですよ。


とりあえず「あり得ない量のタスクを渡した」上で「完了条件が明確ではないもんだから、仕事が終わっても変更に次ぐ変更で一向にお仕事が終わらず」「でも次の仕事はアサインされているからお仕事が併走状態になって」「併走したお仕事も終了条件がころころと変わって片付かず」「さらなるタスクの平行が以下略」となって。
結局「あり得ないほどの残業時間」が発生して、で、会社は「タスクの量は適切であると考えている」「彼が、仕事を完了させなかったから結果的に仕事の併走になったが、彼が仕事を完成させられなかったのは彼の能力のなさに起因するところが多い」とかって逃げて終わり。
社会保険労務士に相談しても丸め込まれるだろうし、役所に駆け込んで片付くとも思えないし、裁判に持ち込む前に潰れる人は多いだろうし、裁判でもまず「企業側の弁護屋」が潰しにかかってくるだろうし、その後で「裁判官がまともな判断できるか」ってぇと限りなく疑問だし。


そう考えると「社会保険労務士なり役所なりに相談した先が幸運にも親身になって考えてくれて」かつ「裁判に持ち込む体力と気力と財力が残っていて」かつ「企業側の弁護士が、嘘つきではない程度に品性を保っていて」かつ「裁判官が割とまともでかつ現実的な判断をしてくれる」っていう幸運ロールに全部成功して漸く勝利。
でも勝利してもせいぜい「じゃぁ残業代は支払います」で、そこまでに費やす山盛りのコストとの天秤で考えると「本当にそろばん勘定が合うのか」は疑問。…まぁ「今後の、同じような目に遭っている他の人達のため」にも頑張って欲しいなぁとは思いつつも、実際に頑張れるかってぇとそうそう頑張れるもんでもない。


なんていうか…本当に心の底から全くもって全然の皆無なレベルで「現場ってか仕事ってものを知らない」人達が、駄目な頭を使って一番駄目なところに落とし込んだんじゃないかなぁ、っていう感じがしてならないのですよ。


おいちゃんは受託で色々と苦しんだり苦しんだり張り倒したりしてますが。
その辺は、その辺の苦労込みで「それでもフリーランスを選んでいる」という自分の選択肢なので、別に良いのですが。
覚悟も選択もしていない人達が事実上「同じ苦しみ」に遭遇するのは、さすがにちょっとどころではなく、色々と懸念してしまうのですよ。


「働いたら負け」ってな話が大勢に同意されてしまいそうな、そんな状況だけは避けて欲しいなぁ、と、切実に感じる次第でございます。

*1:…とはいえ、ンな方策が現実的にあるんなら、請負系に応用できるからとうの昔に出ているような気も山盛りでするのですが…

*2:労働者全般なんだろうけど、一端、技術者メインで話進めるよ