がるの健忘録

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

正社員がフリーランスになるための道程の1例(途中まで)

ちとお話があったので「正社員がフリーランスになるまで」の道程を少し、書いてみようかなぁ、と思います。
あくまで「1ルート」程度ですし、いろいろと極論や偏りもありますので、適宜割り引いたり補完したり妄想したりしながら読んでいただければ、と思います。
まぁいつもの事ですが(笑


とりあえず前提として、正社員を「以下のスキルを持っているエンジニアさん」とみなします。
・指示書どおりに、いわれたことが大体できる


もうちょっといろいろできるわい、という向きもあらっしゃろうかとは思うのですが。
ミニマムからstartしたいので、一旦、この辺からはじめていければ、と思います。


最終的には
・自分でビジネスを作る系のエンジニア
・他人のビジネスを手助けする系のエンジニア
のどちらか、あるいは二束のわらじ(にしても多分、どっち寄りか)を選択することになると思うので、その辺を前提に。
「一生涯エンジニアをやるつもりはなくて」という向きについては、適当なところでルートから外れてくださいませ。

まずは派遣

とりあえず、まずは「派遣会社経由のフリーランス」をお勧めします。いきなり「案件受託」は、些か「必修科目」が多いので。
ここは、うまくいくと「いわれたことができる」レベルでも(年齢と金額と持っているスキルの種類と幅、によりますが)ある程度、お仕事自体はどうにかなります。
ここにおいて「正社員のころに身についていなかった」必須スキルは、以下のいずれかです。


・「騙してくる」やつ、「下品な」やつが寄ってこない、結果としてトラブルの全てが「自動回避してくれる」程度の運
・請負、準委任、派遣の法的な違い、の理解


「運任せ」で全てが片付く場合は考察も努力もいらないので、一旦、運任せルートは切り捨てます。


ちなみに「営業側の品(ひん)が悪くてトラブル」は、一定確率で存在します。
■[親方]「偽装請負」を別の角度から( http://d.hatena.ne.jp/gallu/20140205/p1 )のあたりを一読いただくと、比較的、一撃。

お仕事が完成していない上に仕事のやり方進め方も自主的ではなく指示待ちばかりで業務が滞りがちで、かつ遅刻が多いので大幅に減給をします。

という発言は、近しいものであれば正直「そこそこ」拝聴します*1
この台詞に潜む「相手にとって一方的に都合がよい、法的におかしいハイブリッド」が見抜けないと、ま〜ま〜苦労します。


簡単に説明すると。いわゆる「派遣屋さん」系列でお仕事をするのに、本来的には「請負はありえない」です。
なんでかってぇと「完成の定義が不明瞭」「時間じゃなくて、お仕事の完成をもってお金と引き換える」あたりが、あんまりにもなじまないから。
ちなみに「派遣と準委任の違い」は大雑把には「指揮命令系統の違い」って思ってよいです。「労働者派遣法の制約の違い」って見てもいいけど。


おハシタナイ営業さんは「偽装請負な契約」を割合と好みます。
理由はいくつかあるのですが、結論だけ書いておくと「請負には存在して準委任(と派遣)には存在しない」のが、「仕事の完成のお約束」と、そこに連なる「完成責任」とか「瑕疵担保責任」とか、その辺が営業トークとしては使いやすいから…というか「客にちゃんと説明できるホドの技術と理解度がないから」。
あんまり駄目くさい成果物は準委任であっても「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」ってもんが出てくるので「常識的かつ一般的に、その道のプロとしてこれはなんぼなんでもあずましくないんでないがい?」って突っ込みはありえるのですが。
つまり「あんまりにもこりゃひでぇ」でなければ、「無茶言うなや」という突っ込み返しが可能なんですね、っていう法的側面。
その辺の整理整頓ができないので「一方的に客側にいい顔をする結果」として、その全てのしわ寄せを「技術者に寄せる」って感じですね。
なので、そーゆー連中に会った時は注意。で、そこをふるいにかける意味も含めて「準委任契約ですよね?」ってのでジャブを打つ必要があるわけです。


とはいえ、請負とか派遣とかのところを「杓子定規にがっつりと徹底的に細部までこだわって」微に入り細を穿つように質問したり厳密にしたり、ってのは、それはそれであんまりお勧めしません。
営業さんもぶっちゃけ「いろいろなしがらみがある」わけですし。
その辺の「バランス感覚」を養いつつ、とはいえ「自分が痛い事にならない」ように…という、絶妙なさじ加減の交渉が、すでにこのタイミングで「必要」とされるわけなのですね。


ちなみに。
相手個体が「善い人」であっても、会社の方針や状況その他によって「対応が変わる」ってのは、「スタンフォード監獄実験」「ミルグラム実験」「アイヒマン実験」なんて単語をググってみるとよいでせう。


まぁ、なんでまずは「契約形態がどうなっているのか」。
あとは、その形態にあわせて「あんまり無茶言ってこないレベルの状況」を整えましょう。
っつか派遣系で「契約形態が請負」とか「完成責任/庇護担保責任があるよ」とかってのは、いわゆる「偽装請負(請負偽装派遣)」なので、危ないんで、基本、逃げましょう。


とはいえまぁお客様としては「ちゃんと仕上げてほしい」し「問題があったら対応してほしい」ってのもまた、偽らざる本音。
その辺をどうさばくか、ってのは、個々人の技量とか今後とかいろいろなものとの天秤でしょう。
おいちゃんは「無理がなければ期間内に仕上げますし、途中変更が厳しければ言うし、延長してくれるんなら延長して片付けるし、その辺はぶっちゃけ、ご予算次第ですよ〜」「事後対応は、ご予算確保しておいてもらえれば、お声がけいただければうかがいますよ〜」って返事を大体しますかねぇ。


いただけるモンいただけて、お体が無理のない範囲*2であれば、拒否する理由もないので、謹んでお請けいたします。


事後対応とかで「これくらい無料でやってよ〜」については、基本すげなく切り倒しますが、切りにくい場合「時間数を明記したうえで」やむなく(営業戦略上)請ける、って考え方も、なくはない。
ただし営業さんは「フット・イン・ザ・ドア」を明示的あるいは暗黙的に体得している可能性が高いので、気をつけないと「ずるずると延ばされて」面倒になるんで、気をつけましょう。
なので基本的には「すげなく切り倒します」。
営業さんの「次回は条件の良い案件を〜」ってリップサービスは、正直、あんまり信用していないので。
「無理がきく」相手には、次も「無理を利かせなきゃいかん案件を割り振る」ことで、全体を調整するもんです。実際問題。


経理っつうか税務っつぅかぶっちゃけ税金関連のお話は、派遣会社によって「やってくれたり、やってくれなかったり」。
やってくれなかったら、本の1〜2冊も買ってがんばるか、あるいは税理士さんに依頼してみましょう(お金かかるけどね)。
簿記3級レベルくらいの帳簿つけておくと、圧倒的に楽。Excelで十分に事足りると思われますが、興味があったらシステム自作しましょう(そこかいw)

小さなサイズの請負

「派遣と平行して」が懐的には安全かと思うのですが。
まずは「10万未満」くらいの単価の、安めの案件をある程度数こなしておくとよいように思われます。
ん…言い方を変えると「支払いブッチされても諦めがつく」程度の金額の案件。あるいは「要求内容が5倍くらいに膨れても諦めがつく」程度の分量の案件*3


ここにおいて、今までになかった、こんなスキルが(ある意味大変に唐突に)必要とされます。
・ユーザさんが望んでいるもの、の理解と、それを把握するためのインタビュースキルその他
・自分の単価の適正金額
・「ユーザが望んでいるもの」と「ユーザの提示金額」がある程度つりあってるか、極端にバランスを欠いているか、の判断と、値段交渉関連のスキル
・着手後の「仕様追加、仕様変更」に対する制御/コントロール
経理と税務処理(少し内容が増える可能性があるので)


特に望んでいるもの、については。おいちゃんは「お客様の言う通りのものを作ると失敗する。お客様の欲しいものを作ると成功する」なんていいます。
http://ir9.jp/hd/hd060727_01.png
この辺の絵は、もはや「どこが元ねたかわからないくらい」有名なんじゃないかなぁ、と*4


で、もう片側にあるのが「自分の単価(適正)」。
派遣と平行でやってるんなら「当座の飯は派遣の収入で確保」できるのでよいと思うのですが。
いつかフリーランスメインにするのであれば、無理のない単価を狙いたいところです。その辺の金銭感覚は、あちこちの案件系サイトを見てみるといいんじゃないかなぁ、と。
個人的には「ある程度がっつりしたスキルがもてた時点で、一ヶ月(160時間)80〜100万」くらいってのが、ひとつの目安なんじゃないかなぁ、と思います。


で「案件規模=工数」と「自分の単価」から、今回の案件の金額が見えてくるので。
あとはお客様との交渉フェーズ。
ちなみに「案件規模」は、しっかりと見積もってもなお「平気で倍くらいに膨れる」ものなので、そこは丁寧にヒアリングとかしておきたいところですが。
まぁ数回くらいは「案件仕様は、パン種のようなものである。女がそれを取って、三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」って状況の膨らみ具合の半端ないあたりを見たり体で感じたり痛みで覚えたりしながら、「プロジェクトスコープのコントロール」について思いを馳せたり悩んだり相談したり学んだり絶望したりトラウマになったりテクニックを磨いたりしましょう、ってンでもいいと思われます。そのための「小さな案件」ですしおすし。


ちなみに「(色々な意味で)あわない案件」を下手に請けると自殺行為なんで、やめましょう。


その後、実際に着手してからも「パン種で膨らむ粉」が見て取れるので、コントロールコントロール
基本的には「追加料金」って話で、早めに根っこから食い止めましょう。
ただし「ビジネス上必要なもの」ももちろんあるので、その辺のヒアリングと交渉と提案、も重要。


ついでに、このころのタイミングで「ある程度の人脈」作っておくとよいです。
同業者同系統スキルの人間であれば「あふれたときに仕事をふれる」相手になりますし、別系統スキル、別業者であれば、そっちが必要なときに助力を仰げます。
しんどい時には愚痴も吐けます(笑


また同じくらい重要なのが「自分に対する投資」。
まぁ社会人であっても30代超えるとそうだと思うのですが、派遣やフリーランスならなおのこと「間違えても、諸々が足りなくても、誰もしかってくれません。黙って切られて離れていなくなるだけです」。
無料でしかってもらえるのは、正社員でかつ20代(下手したら前半)くらいまで。
なので「絶え間ない切磋琢磨とスキルアップ」は、とても重要っつか死活問題になります。
ついでに書くと、そっちの意味でも「ある程度の人脈」がほしくて。「突っ込んで突っ込まれて」が気軽にできる人脈が複数あると、大変に心地よい、(比較的)安全な人生が送れます*5


最後に経理の話は、いわゆる税金関連のもろもろ。白かったり青かったりするアレです。
専門家に投げてもいいのですが、お金の出入りの最低限くらいは、ちゃんと自分でも把握しておきましょう。
特に「今までは派遣会社がやってくれてた〜」な人は、このタイミングで、是非。

中規模サイズの請負

大体、単価としては100万未満、くらい。
これくらいになると「プロジェクトマネジメント必須」になりますが、一方で「腕っこきが一人いれば力づくで」「素人の集団でも、時間だけぶちこめばギリギリ、それっぽいものを納品っぽいことをしてシステムっぽいものが動いているフリをできる」くらいの規模、であることが多いです。
この辺の規模で、ちゃんと「プロジェクトマネジメント」とか、もうちょっと言ってしまうと「相手との正しい喧嘩の仕方」とか「三行半の突きつけ方」とか、その辺の「微妙にダーティーなスキル」を身につけておくとよいと思われます。
まぁそれ以外にも「営業の仕方」とか、場合によっては「他人への仕事の振り方」とか「他人にふった仕事の検収の仕方」とか、色々なものが必要になります。
出来たら「アドバイスしてくれる人(理想はメンター)」をしっかり捕まえておいて、特に初めの数回は「小まめに相談」しておきましょう。金額の1割〜2割くらいを支払って「顧問」とか「アドバイザー」とか「全体監修」とかって形で巻き込むと、より一層の安心感が得られます(笑


また、このころまでに「請負と準委任の違い」とか「"仕事の完成"の定義」とかがあいまいだと、大やけどをする可能性があるので。
しっかりと勉強しておくとよいでしょう。


あわせて、この辺の案件から「一人ではギリギリ、あるいは無理」な、協業スタイルが増えてきます。
「他人への仕事の発注の仕方」とか「受注の仕方」とか、そういったことも学ぶ時期ですねぇ。
その辺が「あんまり下手」だと、いろいろと先細ります。


もうひとつ。そろそろ「自分の武器」を意識しておくとよいころあいです。
「得手な分野」「ふつ〜の分野」「苦手だけどできなくもない分野」「切り捨てる分野」を、ある程度明確にしておきましょう。


ここのフェーズあたりが、大体「滑走路を走っている」フェーズです。つまり「離陸寸前」。
ちなみに、200〜500万以上のどこかあたりから「素人に毛の生えた程度のプロマネスキルでは確実にコケる」閾値が存在します。
なので、まずは100万未満程度の「ま〜ま〜のサイズだけど、最後は力業で挽回可能」な程度の規模で、しっかりとトレーニングしておきましょう。

それ以降

「自分でビジネスを作る系のエンジニア」を望む人であれば、「自分のビジネス」を構築する力を。
「他人のビジネスを手助けする系のエンジニア」を望む人であれば「「相手のビジネス」をヒアリングし、助言する力」を。
このあたりになってくると、現場で前のめりにやってればいやおうなく「これができればいいのに」ってのが見えてくるので、その辺をしっかりと補完していきましょう。

あわせて「見えてこない、横ちょの雑スキル群」も、定期的に「初級」くらいを学習して、幅を広げておきましょう。


この辺になると正直「ブレはあるにしても大体こんなことをやれば」とかいう汎化がまったく通用しません。
周りにいるさまざまな人たちを見て、話をして、聞いて、自分なりの答えを探し出していくところなんじゃないかなぁ、とか思うのです。
ただまぁ一定の共通項はなんとなく見えるような、でも「明らかにその共通項を逸脱している」タイプもいるような、という感じなので。
積極的にあちこちに顔を出して、話を聞いたり話をしてみたりして、自分のスタンスを見つけていくとよいでしょう。
守破離の「離」に通じるものがあるんじゃないか、と思います。


とりあえず「ざっくり」フリーランスの入り口に立つくらいまで+α程度のものを、つれづれと書いてみました。
突っ込みなどありましたらよろしくお願いいたします。

*1:自分に向けられたものではありませんが

*2:「月に400時間」を是とするか非とするか、って問題が以下略。とはいえいい加減アラフィフなので、そろそろ「やめれ」とは思ってます…はい思ってはいるんです…

*3:とりあえず過去に「4倍に膨れ上がった上でまだ"増える"って断言された」案件が経験の範囲では実在します

*4:実際、大本ってどこなんでしょうねぇ?

*5:この点において、これは「自慢できるくらい」人との出会いには恵まれてるなぁ、と、我ながら思いますマジで