gallu’s blog

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

二種類の「死霊術」

専門以外からは一口に「死霊術」と呼ばれるこの系統は、ほぼ全く異なる2つの系統から成り立っている事を、本日は学んでいこう。
端的には「肉を扱う術式」と「魂を扱う術式」である。肉は「物質」、魂は「情報」と言い換えてもよい。
人によっては、前者を「死霊術」、後者を「降霊術」などと呼称するかもしれない。
本テキストでは、前者を「死術」、後者を「霊術」と呼称して、話を進める。

いわゆる「スケルトン / ゾンビ作成」などが死術の代表的な例である。
死術は、大まかには
・物質作成(または物質集約)
・物質編成
・魔力付与
・命令の埋め込み
の四段階で行われる。

いずれを作成するにしても、それは実際に存在するマテリアル(物質)であるために。
まずは、素材を「無から作成」または「周辺から集約」させる必要がある。
実際に「完全な無から作成する」のは些か難易度が高いため、一般的には「すべて周辺から集約する」または「核となるあたりを周辺から集約、残りを無から作成する」のが一般的である。
この「作成または集約」の時に、物質特性として「限定:死を連想するもの」という制約が(多くの術師に)ついているため、基本的には「死体」等からの作成しか、行うことができない。
また、腐肉がついていない骨だけの素材から「スケルトンは作成できるが、ゾンビは作成できない(難しい)」のも、「無からの物質作成の難易度」を示すわかりやすい指標である。
「レイス」などの「非実態 / 半実態」を作成する場合、核になるのは「空気中に散在している、死体を焼いたときの灰」である、と考えられている……が、実際にはほぼ「埃(ほこり)」であろう、と思われる。

作成または集約した「物質」は、編成によって「任意の形状」に組み立てられる。
死術において、基本的にここは「あまり色々な小細工を入れないところ」である事が多いため、ここについては「通り一辺倒の術式」である事が多い。
時々出てくる「犬の死体を3つ使ってスケルトンヘルハウンド(モドキ)を作る」などの場合は、この「編成」の術式に、それなりの工夫が見て取れる。
ただ、ここで「あまり無茶な形状」を作ると後々の性能に響くので、ここを扱う場合、基本的な生物学などを修めておいたほうがよいであろう。

「魔力付与」の段階で、特別な力を、くみ上げた物質に対して付与していく。
単純労働用のゾンビであれば多少の「筋力増強」くらいであろうし、レイスなどであればここで大量の付与をして、存分な能力増強をすることがよくある。
また、もし編成の時点で「武器や防具」などをくみ上げている場合、それらにも合わせて魔力が付与される事があり、この場合、単騎でもかなり強力な死体が出来上がる。

最後に「命令の埋め込み」によって、さまざまな命令に従わせる。
一般的なのは「作成術者の、簡単なワンワード(1語命令)に従え」である。柔軟性に欠けるが、最もよく使われる。
それであっても「基本的な動作」をすべて命令として埋め込む必要があるため、それなりに膨大な命令になる……ので、基本的には「特にアレンジをせずにそのまま、固定の命令(の塊)を埋め込む」事が多い*1
そこから派生して、「作成術者以外に、選択されたこのメンバーの命令に従う」であるとか「多少の判断力がある」とか、逆に「固定の命令を埋め込まれて一切の変更を受け付けない」とか、そういったバリエーションが存在する。
それらのバリエーションの中に「ほぼ自由意思を持っているかのように振る舞う」高度な術式もあるが、基本的には「埋め込まれた命令にそって動いている」だけなので、自由意思を持っているように見える場合、それだけ複雑な命令が埋め込まれている、というのが実態である。
また、ここでもう1点、特殊な分岐が存在する。
それは「ベースになる素材の記憶を利用する」という術式の追加で、これは「霊術」の術式が絡むところになるが、これを使うと「プリセットにある単純な動作」ではなく「生前の、熟練した動作」を埋め込むことができるために、より強力な死体を作ることができるようになる。

この「命令の埋め込み」は、物質に固有の「色」が付くため、「破壊して新しい命令を埋め込む」のは、相応に難しい。
難易度的に「新しいモノを作る」ほうがはるかに容易であるため、「破壊して新しい命令を埋め込む」術式はあまり浸透していない、が、むろん、存在はしている。

なお「命令を全く埋め込んでいない」ものを「ブランク」と呼称する事があり。
あまりポピュラーなものではないが、一部「霊術も得手としていて、さらに命令埋め込みに特別のセンスがある術者がいる」ような時に
・ブランクまでを作る術者
・命令埋め込みに特化する術者
といった形で分業するケースが、全くないとは言わない。………まぁ「稀」ではあるが。

かように、死術とは言ってしまえば「ゴーレム作成の亜種」である。
そのため、術者の適正によっては「ゴーレム作成なども行えるようになる」ケースはそれなりに存在するし、あるいは「物質作成」「物質編成」「魔力付与」の系統が得手な場合、そちらの術式も相応に長ける、というケースはそれなりに存在する。

また。
これらの亜種として「大量のゾンビ(その他アンデッド群)がいると、そこからアンデッドが自然発生する」という事象が、一部で知られている。
この事象は、端的には「術式の共振」であり、つまり「そこに群がるアンデッドが作られた術式と同じような術式が、共振によって発生した結果、新たなアンデッドが作られていく」事になる。
この場合「魔力付与」と「命令の埋め込み」に比較的特徴があり、つまり「共振による」程度に「全体で共通の術式」が使われるため、あまり強力な魔力付与や特別な命令埋め込みは発生しない。
そのため、一般的に「低級(と呼ばれる)アンデッド」が発生する事が、圧倒的に多い。
また、高難易度のアンデッド生成の場合、術式がそもそも「外に漏れるほど非効率ではない = 共振しない」ので、「高級アンデッドの自然発生」は、そういった意味でも、まず発生し得ない。


一方で霊術は、端的には「死者(と認識されるもの)の情報」を扱う術式である。
比較的ポピュラーなあたりで「口寄せ」であるとか「死者からの情報の読み取り」といったものがソレにあたる。
一部で言われている「死霊術とは賢者の術である」といった類の呼称は、基本的に霊術を起点にした言い方であろう。

「死者」の定義が幾分難しいところではあるのだが。霊術においての「死者」とは、端的には「以降、情報の更新がないもの」を指す。
そして、霊術において「死者」とは本質的には「情報の塊」である。
記憶系の術式に長けているものにとっては常識なのだが、情報が「(突然)失われる」事は、なくはないが、基本的には「徐々に揮発していく」ものである。
そのため、多くの場合、ある程度までの過去の記憶であれば「適切にリンクをつなぎなおせば」大概の記憶を取り出すことが出来、どちらかというと「どこまで適切にリンクをつなぎなおせるか」のほうが、難易度が高い。
あとは「いつから揮発が始まり」「どれくらいで揮発するか」「揮発を食い止める、あるいは遅延させる手段はあるか」といったあたりがポイントになる。

揮発の始まりは、情報体が「生命活動を止めた」時、言い換えると「情報更新が停滞した瞬間」から始まる、と考えられる。
揮発の速度はなんとも言い難いが、弱いもので月単位から、強いものだと千年単位くらい、までの間で推移をしている。「通常の人間」であれば年単位程度、であろうか。
「揮発を食い止める、あるいは限りなく遅延させる」方法が、霊術には存在する。それが、霊術を使うものが「できるだけ新鮮な死者を欲する」理由の一旦である……最も、本当に「香一本が燃え尽きる」時間に拘泥する必要は、実際にはないのだが。

また、上述のゆえに、(特に人間の)死者はおおよそ「生前のあらゆる記憶」を、リンクの有無は別にして、保持している。
通常は適切に選択をした上澄みの情報を用いるが、その気になれば「ありとあらゆる生前のすべての、微細なものを含む情報」を得ることもできる。が、それはつまり「(極めて)短時間に、人生を1つ経験する」に等しい情報量になるため、やり方と術者の力量によっては、割と容易に廃人と化す。
そのため、例えば「口寄せ」の類であれば「言葉として表現できる」くらいにまで情報密度を下げることで、廃人と化すケースへの(簡単な)防御、としている。

ここで「魂」という問題にぶつかる。
「何をもって魂と呼ぶか」は、(信仰の拠り所などを一端置いておくと)非常に難しいのだが。
霊術を突き詰めていくと「情報の塊」が、そのまま「生物の魂」である可能性、にたどり着く。
つまり、霊術を突き詰めていくと。「死者の情報」だけでなく、「生者の情報」に対する読み取りや書き込みが出来る方向に進んでいく術式もあるのだ。

また「関わる様々な情報」の関連性を計算すると、「(多くの場合においては、基本的に割と短い)未来の予測」をすることが出来る方向の進化もある。
未来に行けば行くほど、計算の複雑度が加速度的に増すために、基本的に「あまり遠い未来」を占うのには適していないが。


一部「(生者に)死を与える(≒魂を抜き取る)」や「魂を吸い取る」といった類いの術式を連想するケースがある、が、これについての分類は、もう少し細かい理解が必要となる。
「死を与える(≒魂を抜き取る)」場合、これは単純に「対象に"現象としての死"を与える」ような術式であり。
この場合「生者に」であれば、それは「生命系の術式の一種」と見なすことが出来るので、本質的にはそもそも死霊術ではない(それっぽくはあるが)。
近似の術式として「無機物に死を与える」ようなものもあるが、多くの場合においてこれは単純に「物質を劣化させる」という、物質操作の一種になるので、ギリギリ、死術に近しいものではある、が、術式構成はかなり異なる。

一方で「魂を吸い取る」と評される術式のコアは基本的に「抜き出した魂を使って何かをする」であり、これはつまり「対象の情報を抜き取ってどうにかする」術式であるために、こちらの構成は霊術と近似になる。

これら以外にも、一般に「死霊術"とされる"」術は多々存在するが。
死霊術は、まず大きく2種類(「物質を操る死術」と「情報を操る霊術」)が存在し、またそこからの分岐や亜種が諸々に存在している。
また同様に「一般に"死霊術とされる"が、実際には死霊術に属さない術式」も、少なからず存在している。

勿論それら「全て」を修めるという目標も興味深くはあるが、まずは1系統、自分が「最も馴染む」系統を深く学んでみるのもよいのではなかろうか。

本文は、そんな「未来の学徒」達に捧げよう。

*1:このあたりは、興味があれば「プリセットプログラム 紅殻のパンドラ」で調べるとよいだろう