gallu’s blog

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

2 その場で作るシナリオ

注:2、とあるので、多分なんかの続きだと思うのですが…この文章だけがサルベージされてきました(苦笑


深淵のもっとも恐いところの一つは、PCの設定によって、シナリオが極めて多岐にわたって変化しやすいことである。
「奇妙な旅人」を中心としたパーティーになったときと「破魔の射手」を中心としたパーティーになったとき。「復活しそうな魔族」という題材でシナリオを組めば、ストーリーに大きな差異が生まれることは容易に想像できる。
もしまったく想像ができないようであれば、もう一度、深淵のシステム−主にアーキタイプの説明のあたり−を読んでほしい。おそらく、すぐに理由は想像がつくはずだ。


この解決方法は、基本的に二種類である。
PC(及び運命)を限定するか、あるいはシナリオをより柔軟な物にするか。
PCを限定する方法はほかで述べられていると思われるし、また単純に「プレロールドのキャラクターを使ったシナリオ」でしかないので、ここでの考察は行わない。
ここでの考察は「シナリオに柔軟性を持たせる」方法である。
なお、第一章同様「筆者が日ごろ行っている手法」をベースに話を進める。したがって、万人に必ずしも通用するわけではないことをあらかじめお断りしておく。


まず第一に、事前準備である。
セッション開始前に可能な限り準備をすることは、常にマスターの助けとなる。
私の場合、まず用意するのは「話の核になる要素」である。これには「魔族」か、魔族ないしやたら困難な状況に振り回されている「人物」を持って核とする(結局のところ、何らかの形で魔族が絡むのだが)。
参考までに、私が複数回使っている、比較的お気に入りのねたを幾つか示したいと思う。なお、筆者の趣味をこれで云々してはいけない。無論、趣味丸出しではあるのだが。


・魔族「**の公女**」。八弦琴の、とりあえず最強の魔族。琴の音色が入り乱れるセッションは、常に幻想的な雰囲気を出しやすい。うっそうと茂る森、寂れた砂浜など、ロケーションを自然に持ってくると、より美しさが増すだろう。
・魔族「愚鈍なる**」。この魔族の魔剣を探すべく、という設定がある。この魔剣を理由も分からず探しているNPCとPCとの絡みが、非常に面白い物になる。特に「運命の出合い/異性」などの関係を引き裂くのが面白い。
・ロプシークに魅入られたもの。死者再生もの。愛するものの復活のために動くNPC。狂気と化した愛情を演出することで、面白さが増す。


ちなみに。
魔族を出すときは、そのまま出すのは面白味にかける。人間でもいいし、それ以外の物でもよいのだが、なにか別の物をヨリシロにしておくと面白い。
とくにヨリシロが人間の場合、人間としての思惑がスパイスになるので好ましい。
無論、凶悪な魔族が−それも数体まとめて−出てくるのも、それはそれで非常に面白い。


当然の事ながら、出演が決定しているNPCの設定はしっかりと練り込んでおこう。これがないと事実上セッションが進まない。
生い立ち、性格、名前、セッション内でNPCがとりうる基本的な行動計画(基本方針)などは、きっちりと練っておこう。特に性格と基本方針は非常に重要である。これがないと、PC達の行動に対して適切で一貫したリアクションが起こせない。しっかりと練り込むことを薦めたい。


さて。事前準備は「これだけ」。大変に微妙で複雑な作業だが、がんばっていただきたい。なお、この微妙で複雑な作業を、筆者は主にコンベンションにいく直前の電車の中で…いや、なんでもない。
間違っても「ううむ、何も考えとらんなぁ。…んじゃ、運命カードをつも引きして…この魔族かぁ…あ、面白い設定がある。んじゃ、こんな感じのNPCで…まぁ、あとは適当にその場で修正すれば…NPCはあれを使いまわして…」などということを−ましてや電車の中などで−やってはいけない。いけないんだってば。


さて。当日。
マスター紹介のときに、とりあえず「ギャグではない」事を告げておく。比較的に知名度が高いので問題は少ないと思われるが、いきなりギャグに走られると、深淵のセッションを行うことが割合に難しくなると思う。シリアス系であることくらいは告げておこう。
「シリアスがきらいな人間はくるな」くらいのことをいっても、恐らくはバチはあたらない。くる人間があるいは減るかもしれないが。


とりあえず世界観の説明。どうせそんなに重要ではないので、ざっくりと流そう。
重要なのは
・魔族が跳梁跋扈している物騒な世界
であることくらい。後は、魔族は(個体にもよるが、えてして)やたら強力な存在であることを理解してもらえればよい。「魔族は実は元人間で云々」などという情報は必要ない。魔族は単純に悪者でよいのだ(特に「実は悲しい設定を持つ魔族」を使うときは重要)。


プレーヤーたちに、適宜アーキタイプから好きな物を選んでもらう。どうしてもマスター的に(あるいはシナリオ的に)やりにくいアーキタイプは事前に「選ぶな」と申告しておくべきである。が、筆者は一度たりとて選ぶな宣言をしたことはない。意外とどうにかなるモンである…多分。
パーティーアタックの可能性をきちんと認識してくれるのなら、どんな組み合わせでもかまわないと思う。っていうか、その方がかえって面白かったりするのは私の気のせいだろうか。
なお、キャラクター作成ルールに基づいて作らせるのは、止めたほうがいい。何せ時間がかかる。ほかにも幾つか問題があるし。


アーキタイプの説明には、たっぷり30分はかけてみたい。アーキタイプの説明をすることで、世界の雰囲気が多少なりとも見えてくるからだ。
その後、選択時間を30分ほど。
たいていのコンベンションのタイムテーブルであれば、そろそろお昼ご飯の時間である。
選んでもらったアーキタイプのページを昼食時に「そのままコピー」して使うと、おかしな転記ミスを犯さなくてすむので便利である。ただし、あらかじめきちんと正誤表は取り寄せておこう。メーカーに連絡すれば、どうにかなるはずだ。


昼食後。
おおざっぱなルール説明を行い、そのまま運命の決定を行う。
余談。運命を選択するときは、運命デッキというものを作ることを強くお勧めする。ようは使いやすい運命だけを抽出したものだ。
これは筆者の個人的感想に過ぎないのだが、「借金」とか引かれてもいまいちムードあふれる演出がし難いように思う。それよりは「言えなかった一言」だの「運命の出合い」だののほうがムードを作りやすいと思う−少なくとも私はそうだ−のだが、いかがだろうか。
個人の好みやシナリオの傾向によっていくつかのデッキを作っておくと非常に便利である。


運命の決定を行ったあたりから、マスターの仕事が増える。
プレーヤーには、以下の呪文を唱えておこう。
「運命が決まったところで。PCの設定を固めてほしいので、30分ほど自由時間にします。PCの設定をすこし考えてみてください。」
対プレーヤー向けのホールドパーソンである。幸い、セービングスローは存在しない。
万が一、億が一この呪文に抵抗をするプレーヤーがいる場合(通常はアンチ・マジックシェル)。たいていは「時間は大丈夫ですか?」とかそのあたりのスペルを唱えてくるものと思われる。
それに対抗するために。限定環境におけるウィッシュのスペルを暗記しておこう。丸暗記でかまわない。
「時間は大丈夫ですし、深淵はキャラクターをある程度ねっておいたほうがセッションが面白くなりますから」
今のところ、このスペルに抵抗できた存在は皆無である。っていうか、これを読んでいる諸氏はこのスペルへのレジスト方法を考えてはいけない。OK?


さて。ここからが、本稿の最重要ポイント「シナリオを作る」である。
まず確認すべきは、各PCの運命である。これをおいてほかにない。
二つある運命のうち、基本的にはどちらか一つにターゲットを置きたい。無論、慣れてくれば両方とも使えるのだが、慣れないうちは、無理をせずどちらか一つにとりあえず絞っておく。
選び方の基本。より派手で、より陰惨なほう。わかりやすい基準である。また、テンプレートの運命は基本的にはスパイス程度に考えておくほうがやりやすい。無論、スパイスを味わう料理という物はこの世に五万と存在するのだが。


つぎ。
運命を主体にした、PC及びNPCの相関図を作る。
気をつけたいのは、PC一人に線が集中することを避けなければならない、ということだ。たとえばここに四人のPCがいるとしよう。
Aさんが、BからDさんの全員とつながりがあり、BさんCさんDさんは、それぞれAさん以外との関係を持っていない。
こういう状況が、避けるべき状況である。
もしかりにAさん(のプレーヤー)があまり動かないタイプだと仮定した場合。全員が動かない(動けない)状況になってしまう。
そういうリスクを避けるためにも、PC一人に集中する相関図は書かないようにしなければならない。なお、NPCに集中する場合、あなた(マスター)が何とかできるのなら、それは一向に構わない。
補足。
相関図は、本当の相関図のほかに「ミスディレクション(誤誘導)としての相関図」があるとよい。ミスディレクションは最後にもう一度話をするが、非常に重要な要素である。っていうか面白い。


つぎ。
導入部を作る。
どうやってPCたちを一個所に纏め上げて、とりあえず同じ方向に進ませるかを考えておく。最後の手段はいくらでもあるが、できれば自然に誘導できたほうが好ましいのは論を待たないだろう。


さらに。
いくつかのイベントを考えておく。とはいっても、それは簡単な物でいい。
どんなものをあげておくべきかは、後でまとめて書いていこう。とりあえず、ちょっとしたシーンになりそうな物を幾つか、という感じである。
ただし、あまり多くのイベントは必要ない。セッションが長引いて、だれる原因になるだけである。
基本的には、一山あっていきなりクライマックス、くらいの短さでいい。その中での小さなイベントを想定しておくのだ。


さて。
このへんを作ってるうちに、30分などという時間は過ぎていく物である。
ここで、もう一つだけ、行わなければならないことがある。
「言えなかった一言」「罪悪感」など、詳細な設定がほしいものの情報収集、である。もちろん、この情報はしっかりと「メモを取り」、今日のセッションに備えなければならない。
プレーヤーに「設定教えて」の2ワードスペルを唱える事で、大抵は結果が出る。
まれに「マスター決めてください」という人もいるが、この時は素直にマスターが決めてあげよう。もちろん、引き受ける時に邪悪な笑みを浮かべる事は全精力をもって止めるべきである。ポーカーフェイス、ないし優しい微笑みが望ましい。次点は「めんどうくさいなぁ」といった類の顔。苦手な方は、可及的速やかに練習をしておこう。マスターには必須の技能である。


最後に。季節を考えておこう。
秋から冬にかけては、もっともよいムードを醸し出せるいい時期だ。夏直前の梅雨(あるのか?)も、なかなか面白い。湿気でむせ返る森の中、とか。
ムードを作ることに慣れたら、夏の一幕とか、春の芽吹きのときなんてのもよいだろう。
自分の得意な季節を見つけ、とりあえずはその時期を使いまわすのが吉。


シナリオの作り方というか骨格の作り方は、こんな感じである。
では、実際にシナリオを進めていきながら、方向の微調整をする方法を眺めてみよう。


出だしの夢歩きは、とりあえず状況の整理をかねておこなう。
これで、初手のプレーヤーたちの嗜好方向を見据える。っていうか、とりあえず破滅嗜好か泥を啜ってでも生きていきたいのかの、第一段階の見極めをしておこう。


はじめに苦労するのが、PC達の顔見せである。特に「顔を見たことがある」ではなくて「いっしょに行動する」というところに持ち込むには、それなりのテクニックやら小細工やらが必要となる場合が多い。
もっともシンプルで確実で下策なのは、あらかじめプレーヤーにお願いしておくことだ。下策とはいえ最後にしてもっとも確実な手段でもあるので、覚えておいて損はない。
次に、比較的強制的に束ねる方法である。お互い、別々の道を別々のタイミングで動いていたのだが…なぜか同じ時間、同じ場所にいる。ほかのシステムでならともかく、深淵でならどうにかなる。っていうか、わざとこの手法を使って「雰囲気」を出すのもまた面白い。特に、誰とも関係ない時間/場所に移動させると、違和感が出て面白い。
もちろん、設定を絡めて自然に合流させることができれば、それは多分一番望ましい−そうでない場合ももちろんあるが−。


顔見せの前後はともかく、いろいろなイベントが出てくるだろう。
ここで、コンベンションを見据えての注意点。
深淵は、これだけムードあふれる世界観を用意しつつ、戦闘に関してはかなりしっかりしたルールになっている。裏を返せば、ルールをきちんと把握していなければ苦戦は必須であり、しかも時間がかかる。
戦闘系のPCが多い場合はそれなりに戦闘を用意したいと思うのだが、かなり時間を食う可能性がある、ということを念頭に置きたい。まして、戦闘中、非戦闘要員は、通常比較的暇な時間になりやすいのだ。慣れればなんぼでも動けるんだけどねぇ。おいといて、と。
まぁ、1から2ラウンドで片付く程度の、さっくりした雑魚を用意する程度のほうが無難だろう。大丈夫。戦闘系なら片付く相手も、非戦闘要員にして見ればきっちり強敵ですから。
ちなみに、お勧めは黒魔。あとは土鬼とか、そのへん。こーゆー雑魚を数種類準備しておいて、適宜用いるのが吉。


さて。顔見せも終わり、合流したあたりで…休憩を取ろう。とりあえず一服、という意味合い以上に重要な物が、ここには待っている。
顔見せをした状態で、マスターが考えている大まかなあらすじにPC達がどう乗っかってくるか(あるいは乗っかってこないか)が、大体判断できる。
最後の最後でいきなりどんでん返しをされる可能性が0ではないが、当面の方針は合流したあたりのイメージでつかめるはずだ。
したがって、休憩中にシナリオラインを微妙に(あるいは大胆に)調整して、後に備えなければならない。
場合によっては、ここで魔族の一人二人追加して、物語を変えてみるのも一興だ。
時間的には、概ね10〜15分程度が好ましいと思う。


休憩も終わり。
ここらで一発イベントを出そう。最後の収束へ向けての布石だ。何人かの運命に絡むような物が好ましい。運命の一部がひも解かれる、っていうイメージかな。もちろん、勘のいいプレーヤーはここで運命の大枠を推理してしまうだろう。もちろん、それはそれでかまわない。
そうそう。ついでに。運命のミスリーディングをさせる種をまくのにも、このタイミングはもってこいである。特に勘の鋭そうなプレーヤー(及びベテラン)の操るPCの運命は、確実にミスリーディングへ導いてあげよう。もちろん、最後の最後にサプライズ・プレゼントを彼らに与えるためだ。
このイベントは、軽い物でいい。感覚的には30分程度で終了するくらいの簡単な物。
マスターの感覚に対して、実際にはその倍の時間がかかるのが世の常だし、実際にかかる時間は、場合によっては二倍にまで膨れ上がる。
つまり、30分程度のイメージで用意したイベントであれば、概ね1〜2時間かかる。あっという間に終了時間が目前に迫ってしまう。OK?


ラスト直前。とりあえず、休憩を入れよう。クライマックスへ向けての最後の休息。マスターは、ここで最後のどんでん返しの演出を決めるのだ。
頭の中で絵がかける程度には練り込んでおこう。


ラスト。
まず、運命の露見。当然の事ながら、夢歩きを使う。夢歩きを使って、真実を明かすのだ。ミスリーディングがミスリーディングであるとあかされるのは、当然の事ながらこのタイミング。
したがって、運命を露見させる順番までを考え、演出しなければならない。はじめに小さい、個人にしか関わらない運命を。そして徐々におおきくなり、最後に大勢が共有してしまっているような大きな運命を。ここで始めて全員が理解する。一緒に過ごしたPCが、実は魔族だったことに。死者再生によってよみがえったことに。恩人であり、あるいは敵(かたき)であることに。
無論、このシーンでは、声音から表情、言葉のテンポから単語一つ一つに至るまで、きっちりと厳選した素材を利用していこう。気分はほとんど料理の哲人。あるいは桧舞台の主役。
マスターの見せ場である。魅せなくてどうする?


そして、しめ。
PC各個のマスターサイドでの締めは終わっても、PC各個人の物語はまだしまっていない。自分達の持つ真実を知ったからこそできる演出を、PC達にしていただこう。
守るべきものを守るために強大な敵に立ち向かう。かなわぬ愛を絶叫する。脅え、恐れ、逃げ出す。甘んじて死を享受する。魔族の下部になる。仲間だと思っていた相手に刃を向ける。
うんうん。いくらでも演出方法はあるじゃないか。


盛り上がりのテンポをルールで止めることがないように気を付けながら、PC達の演出を見守っていこう。要注意は戦闘。このあたりの裁き方と中断の仕方は、まさにマスターの技術だ。
そして、最後の夢歩き。
PC達の望みを可能な限り受け入れながら、最後の演出をしていこう。PC達の物語のしめである。


で。
すべての夢歩きが終わった後。
「このシナリオ」の夢歩きを行おう。裏で糸を引いていた魔族の、見守っていた人々の。
これによって、物語は決してPC達の物ではない、ということを印象付けるのだ。
なぜ?
まさか、PC達が純粋に自由意志で動いていたとでも?
そして、この物語が本当に終わったとでも?

一つの悲劇の終わりは、次の悲劇の始まりです。
新しい悲劇へのプロローグを見せて、初めて深淵のセッションは終了するのです。