深淵。
久しぶりに、世界観に深い広がりがあるゲームです。
こういった世界では、やはりある程度は歴史が欠かせないもの。
人間が細かく関与してくる歴史は別の項に譲るとして、ここでは神話の世界の歴史を少しだけ語る事にしましょう。そう。ほんの少しだけ。
読者が、これを読んで年をとってしまう事がないように……
その昔。
神が「顕りました」、という頃の話です。
天空には、黒剣のソダールが作りし天空城ヴァタオナイアが浮かび、12と1柱の神々は、天空城にすまわっていました。
そして又この頃、天空城が地上に落とす影から、いくつもの生き物が生まれてきたのです。
この影の者達は、神々の姿に似てはいるものの、能力的に極めて低い存在でした。しかし、その数は多く、地上にはびこっていったのです。
いつしか、そんな影達に知恵を与える物がいました。翼の王ティオールです。
ティオールは、人々に火を教え、言葉を与えました。そして、通火のヒュオヌスが、火の使い方を人々に教えたのです。
しかし、あっけないほど簡単に、影達の平和な日々は終焉を迎えました。
影達は、ヴァタオナイアに対して牙をむき始めたのです。理由は、定かではありません。
ただ、この行動が、この後の歴史に、極めて大きな影響を及ぼしていったのは、間違いありません。
反乱軍の中でも、影の王国の王女オラヴィーは、特に際立った動きを見せました。
彼女自身が強力な戦士である、というわけではなく、しかし、人々をまとめ、ヴァタオナイアに常に剣を向けていったのです。
オラヴィーの行為に怒りを覚えたソダールは、彼女を水牢に幽閉します。そして、彼女は程なく処刑され、影の王国の国民達は、静かになる…はずでした。
処刑前夜。
オラヴィーの前に、一匹の奇妙な蛇がやってきました。蛇は、人間の言葉をしゃべり、そしてオラヴィーに問い掛けをしていったのです。
希望と未来を代償に、ここから抜け出る力をやろう、と。
オラヴィーがここで何を考えていたのかは、定かではありません。わかっているのは、オラヴィーがこの蛇と交わった事。そして、それによってたしかにオラヴィーに力が与えられた事だけです。
後に、この蛇は「大公ブーレイ」である事が明らかにされています。
この後、オラヴィーは人々を魔族に変えています。それがいかなる方法であったのかは、良く分かっていないのですが。
かくして、影の王国の人々は、次々と魔族化していきました。
しかし、それだけで神々が倒せるかといえば、否という答えが返ってくるでしょう。神々は、基本的に不死の存在です。人間が(魔族にはなりましたが)どうあがこうが、所詮は無駄な努力なのです。
では、歴史は彼らの反乱の失敗を伝えているのでしょうか。
否。
反乱は、成功しているのです。
翼の王ティオール。彼は「死」を扱っていました。彼のもつ短剣は、唯一神々をすら死に追いやる力を持つ物です。
オラヴィーの説得によって、ティオールは反乱軍の肩を持った、と伝えられています。或いは、単なる気まぐれだとも。
伝説が語ってくれているのは、ソダールはティオールの短剣によって滅ぼされた、という事だけです。
かくしてヴァタオナイアは落ち、次の時代の幕が開きました。魔族達が世界を支配する、恐るべき時代です。