暗闇にいる。
いや、違う。光はある。ただ、それが見えないだけだ。
目が見えない訳ではない。ただ、見えないだけだ、光が。
闇にうごめくものがある。
「やめろ!! しっかりするんだ!!!」
闇にうごめくものがある。
それは……。ああ、ニーナだ。
昔、よく一緒に遊んだ。
物心ついた時には、ニーナは側にいた。
「お、俺達は、おまえを殺したくはないんだっ!!!!」
物心ついた時には、ニーナは側にいた。
この音はなんだろう…。ああ、水が地面に流れ落ちる音だ。
そうだ。よくニーナと行った、あの川だ。
ニーナに水をかけては、泣かせてしまっていたあの頃。
「い、いやーーーーーーっ!!!」
ニーナに水をかけては、泣かせてしまっていたあの頃。
そう。球体で脈打つ、変な生物を見つけて、2人で驚いた事もあった。
驚いた拍子に僕が握り潰してしまった時、ニーナが恐がって泣いていたっけ。
「た・・頼む・・・俺・・たちを・・・・・思いだ・・し・・て・・・」
驚いた拍子に僕が握り潰してしまった時、ニーナが恐がって泣いていたっけ。
ああ、又水の流れ落ちる音が聞こえる。
この暖かい感覚は………
ニーナの肌に、初めて触れた日だ。
ニーナと、始めて肌を合わせた日だ。
「お、お前はっ!! ギルの、仲間の血を浴びて、そんなにうれしいのかっ!!!」
ニーナと、始めて肌を合わせた日だ。
幼馴染だったニーナ。
2人の成長とともに、自然に愛しあい。
そして、始めて肌を合わせた。
暖かい、幸せな時だった。
「や、止めてーっ!! 殺さないでーーーっ!!」
暖かい、幸せな時だった。
あの時ニーナは、恥ずかしそうに微笑んでいた。
そして、僕の腕に、飛び込んできてくれた。
「せめて、俺の手で殺してやるよ。・・・・うぉぉぉぉぉっ!!!」
そして、僕の腕に、飛び込んできてくれた。
僕はそれを優しく抱きしめ…
「お・・・俺の腕・・・じゃ・・・・や・・・っぱり・・・・・・・・」
僕はそれを優しく抱きしめ…
いつまでも一緒だよ、といった。
2人で手を取って。
僕が冒険に出たあの日も、
2人はいつも一緒だから、といって、当然のようについてきた。
「どうして!? どうして仲間同士で殺し合わなきゃいけないのっ!!!」
2人はいつも一緒だから、といって、当然のようについてきた。
随分長い間、冒険を、旅をしてたニーナ。
子供が欲しい、といってたっけ。
僕に、何人欲しい? って、聞いてた。
僕が答えに窮してると、私は沢山欲しいわ、っていってた。
子供はかわいいから、たくさん欲しい、って。
「お、お願いします。子供だけ・・・は・・止めてーーーーーーっ!!!!!」
子供はかわいいから、たくさん欲しい、って。
ああ、優しかったニーナ。
子供の頃いった花畑を、まだ僕は覚えている。
甘い、なんともいえない素敵な香り。
「殺せーっ!!我が国を、民達を、守るのだーーーーっ!!!」
甘い、なんともいえない素敵な香り。
そうだ、あの花園だ。
2人で始めて見つけたあの秘密の花園は、特にニーナのお気に入りだった。
優しかったニーナ。
花を摘むのがかわいそうといって、ただ2人で、ずっと眺めていた。
秋には、林檎がりにいった。
腐ったリンゴを、間違えてつんだ時。
「わ、わしが死んでも、まだ王族の血・・・ぎゃぁぁぁぁ・・・・」
腐ったリンゴを、間違えてつんだ時。
飛び散ったリンゴの汁を、ニーナが、自分の服でふいてくれた。
ニーナ。
僕は、君がいれば、もう後は何もいらない。
ニーナ。君はどこにいるんだい?
ああ、そうだ。君は殺されたんだ。
あの、黒い悪魔に。
…違う、あれは夢だ。
「その傷ついた魂とともに、永久に眠るがいい」
…違う、あれは夢だ。
暗闇にいる。
いや、違う。光はある。ただ、それが見えないだけだ。
目が見えない訳ではない。ただ、見えないだけだ、光が。
……ニーナ。
目が覚めたら、君に会えるね。
…………………
おやすみ
一つの王国を滅ぼした魔族。その魔族が、実は人間だった、と言う噂が流れた。
魔族は後に、勇者に倒された、と言われている。
その魔族の心を知るものは、いない………
異世界の、物語。