がるの健忘録

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

持ち上げるのかのし上がるのか

ちと今日話をしていた中で出ていたので。
ある種のカテゴリの人たちは、楽しいくらい「質」ってものに無頓着です。彼らにとっては「よりよいモノを提供する」よりも「より安いモノをより高く売りつける」ほうに圧倒的プライオリティがあって、結果として、質って感覚に限りなく無頓着になったりするです。
もちろん「質の悪さによってもたらされる問題」は、自分以外の「誰かの責任」にして終了。


…でふと思ったですが。


100人が入社しました。
ある世界観の人に曰く。「俺は100人のなかから一人だけ勝ち残ったんだ」と誇ります。
別の世界観の人に曰く。「俺は100人のなかから90人をスキルアップさせてきたんだ」と誇ります。
方や、様々なモノを踏み台にして摩耗させてその屍の上に自らを持ち上げて。
方や、出来るだけ多くの人がこぼれないように腐心して腐心して一緒に歩き続けて。


うん「どっちが正解」ってもんでもないんでしょうけどね。


えと…相変わらず好きな、「おせん」という漫画から、ふろふき大根の話。
ある女板前さんは、おせんさんの一升庵というお店のふろふき大根の作り方を見てがっかりします。
曰く

ふーん
天下の一升庵と名にし負う板場がどんなかと思ったら
またずいぶん大雑把な仕事だこと


煮干しの出しってなァ頭とワタきちんと取ってやんんあいと
エグくって客に出せる代物じゃないでしょーに


おいおいどーすんだよこれ この大根
面取りも隠し包丁もしないで
これじゃぁ煮くずれしてグズグズになっちまうよ
それともまさか半生で客に出そうってのかい?

対して。日を改めて女板前さんを招待したおせんさんは、初めてそこで手の内を明かします。

煮干しは頭も取らずワタも出さず
ただていねいに埃を取って水に浸して冷蔵庫で丸一日置くだけでやんす
そうすれば琥珀色のきれーな出しになりやすんで
そのうわずみだけを別鍋にとって
そこで初めて火にかけて 煮え玉が沸いてきたら塩と薄口醤油をさっと

大根についても、面取りしない理由をこう説明します。

もちろん面取りするのも立派な手間ヒマでやんす


しかし


角を壊さぬようにていねいに ていねいに 細心の注意を払って
ぜいたくに鍋を使いけっして沸かさぬよう
常に一定の温度で出しを注ぎ足し 注ぎ足し 朝から晩までつきっきりでやる手間と

で、核心に入ります。

せっかくの煮干し せっかくの大根でやんす
たとえそれがどんな手間であろうとも


わっちは
使い切る手間を選ぶでやんす

人を踏み台にして摩耗させて稼ぐのも。
人を育てて大切にして稼ぐのも。
多分どっちも茨の道。


親方として。願わくば、生涯「育てきる」という選択をしたいなぁと、私は、思います。