それは、一つの失敗から始まった。
魔法とは「意志により変化を起こす技法」である。
ならばその「意志」とはなんなのであろうか?
BWの理論そのものは、比較的初期から考えられてはいた。だが「同じ人間を奴隷がごとき状態に堕とす」という行為は、中世以前であればまだしも、この現代の世において、世論が受け入れられるものでは、到底なかった。
「同じ人間」で、あれば。
その変化は、全体から見れば、わずかなものの集合であった。
ある、世界の「魔力の根源(…などというものは存在しないのだが)」の枯渇の可能性の観測。
より高度な、そして重度の魔法依存という風潮。
全く異なる生き物から「人間に極めて近しい」生物が合成できた、という事実。………誰も知らない、嘘。
ほぼ発作的といってもいいほどの速度で決まった、国際魔法連合会議での可決。………インサニティとチャームという二つの魔法を合成した一つの魔法…ルナティック。
人は、望んだ。より強い力を、魔力を得る事を。
あまりにも多くの「魔術師」が願ったその願いは…願いそのもの、意志そのものとして…暴走した。
世界は。あまりにもあっけなく、その魔法にとらわれた。
そうして、生み出した。BWという存在を。
ならば。
生と対になる死は、どこから生まれるのか。何を殺すのか………