がるの健忘録

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

トゥーヴ「dad」

トゥーヴは、一つのBW(blank will)を「特定の品物(通常、15cm程度の杖を模した形状である事が多いが、形状や素材に、魔的な意味での意味合いはない)」に付与する事で作られる。
BWの価格が極めて高額であるために「全ての民が持っているもの」ではないが、とはいえ、ある程度有力な家系や裕福な家系、魔力の強い者などは、所持している事が多い。
なお当然だが、BWにも(かなり極端なくらいの)魔力の高低があるので、おなじトゥーヴであっても魔力はかなり異なる。


ごく稀に、1つのトゥーヴに「2つのBW」が付与されているものがあり、「ダブル」と呼ばれ、極めて貴重である。
単純にコストの問題もあるが、いくらBWが「domestic manから魂を抜きだし、意志を剥奪することで得られる魔力の元」であるとはいえ、厳密かつ完全に「意思を剥奪しきれる」かは難しく、僅かに残った意思の残骸、魂の波長その他の問題で干渉がおきる事も多いため、「十分なだけの意思剥奪+十分な相性」など諸々の条件が重なるために(で、その条件に満たなくて霧散したBWのコストが乗るために)、極めてレア、且つ高額である。
通常は「高名かつ裕福な家系」で「術士としての期待を一身に背負っている」ものに与えられる。
特定の「極めて重要な役職に就く者」に貸与されるケースも少なくない。…よって、ダブルを持つものには大きな敬意が払われるのが常である。


同様に「トリプル」があるが、以下略。
こちらもダブル同様「極めて重要な地位にいるものに貸与される」ケースが多い。


「クワド(4つのBWのトゥーヴ)」以降は国宝級となる。なお、クワドの場合それは「地水火風」を指すと言われている。実際に、3つが現存している。
クワドは「名家の証」的な意味合いが強く、実際、現存している貴族筋が保有している。


同様に「クウィント(5つのBWのトゥーヴ)」がある、と言われているが、これは現存が確認されていない(作成された、という記録はある)。


「セクス(6つのBWのトゥーヴ)」は1つだけ現存していて、これは「王」が所持していることが知られている。
セクストゥーヴは、実際には幾分の干渉があるらしく「通常のトゥーヴの6倍の魔力があるかどうか」というと微妙ではあるらしい。
幾分「儀礼的な」ニュアンスも強い。


「セプト」と言われる「7つのBWのトゥーヴ」については、理論上「可能である」「不可能である」という議論が現在も平行線を辿っていて、決着がつく様子はない。
ただ現実問題として「理論上可能だとしても、現実的に不可能である」という意見で、現場の技術者たちの見解は一致している。


ここに、誰にも知られていない一つのトゥーヴがある。
「dad」と命名されたトゥーヴである。
魔力を導くのに齟齬がない、程度に意識が残っており、極めて希にだが「所有者と念話をする」事があるこのトゥーヴは、極めて穏やかで深い知識を有する。
無口であること、一方で深い見識を持つ、などの性質から、敬意を込めて「お父さん」を意味する俗語「dad」と呼ばれている…と思われているが。
正しくは「隠された知恵」を意味するDaath(ダート)という名前がなまって「dad」になっている。


dadは「本人を含めて、11のBWを保有する」トゥーヴである。
かつ、本人以外の10のBWは適切に扱われ、10の「異なる力の側面」を導き出し、dadの中心BWたる11番目がそれを適切にコントロールするために。
通常どころか、「理論限界」をすら、遙かに超える力を導き出す事が可能である。


とある技術者がなにがしかの意図を持って作成したのか、ただの偶然だったのか…すなわち、必然だったのか。
11番目が他の10のBWを完全に制御している為に「1つのBW」としか見なされず、魔力量を抑えた為に能力としては「C級程度」と思われ。
とはいえ「欠陥であるために必要な判定」は全て問題なくスルーしたために。


「dad」は、安い「C級品」として、流通に乗った。
その力を、トゥーヴ自らの「意思」によって、隠したまま。


dadは、存在しない。
あり得ない、トゥーヴである。


あり得ない。
すなわち
あり得る、事である。