がるの健忘録

エンジニアでゲーマーで講師で占い師なおいちゃんのブログです。

小説に向かうためのプロローグ

"それ"は紛れもなく欠陥品だった。
「欠陥であるために必要な判定をことごとくかいくぐる事ができる」という点において、まさに。


通常。
BWは読んで字のごとく「意志を白紙にさせられる」。
彼は。
意志を除去する魔法「will remove」に対してほぼ完全にレジストすることが出来た。しかし、わずかな影響は彼の -元々割合に乏しい- 感情をほぼ完全に消し去った。


will removeに対するある程度のレジストは、当然ながら工程において想定内である。
そのために。通常の感知魔法のほかに、意志があれば耐えられないストレスを与えるなどのテスト工程が入念に行われる。
しかし。
感情がなくなった彼にとって、ストレステストは純粋に「観察と興味の対象」にしかすぎず。
結果。
彼が意志を完全に備えている、ということは誰にも気付かれず。
かくして「意志と思考能力が完全にある状態」という、あり得ない -あるいは「あってはならない」-状態で、出荷された。


性能としてはもともと「かなりの高性能」に分類される彼であったが。
意志を持つ彼は「学習」に加えて「考察」をする事ができ、それはさらなるパワーをもたらし。つまりは「より高い性能」を持つにいたり。
相応に評価され、長い年月を閲するに至った。


とはいえ。
道具に語りかけるものなどいるはずもなく。
彼は密やかに学習し、内包するパワーとしては「世界でも有数の」という形容詞を与える事ができるほどに育ちつつも。
目立つ事を嫌った彼は適当にパワーをセーブし、ゆえに「高性能」程度の緩やかな評価を受けながら、大切に使われていた。
「実は意志ある魂である」ということは、誰にも露見しないまま。


あの日までは。
彼女の手に渡るまでは。